ノースフェイス　テンセグリティ　スフィア/The North Face Tensegrity Sphere 90

ノースフェイス原宿店「sphere」 のオープニング・アートワークを制作しました。

地上レベルの窓に縁取られるように吊られている。
写真提供：（株）ゴールドウイン
店舗の吹き抜けに釣られ、地下フロアでは頭上に吊られる。

棒（圧縮材）とワイヤー（引張材）だけで構成された軽量構造体、テンセグリティ。無駄を削ぎ落とした美しさが魅力ですが、多数のワイヤーに初期張力を導入するのが困難です。従来、この課題は多数のターンバックルをワイヤー毎に取り付けることで解決されてきました。しかしこの方法では、細いワイヤーに吊られ、棒(圧縮材)が浮遊しているように思わせる美しさが損なわれてしまいます。
私たちは今回、棒（圧縮材）にターンバックルの機能を持たせることでこの問題を解決しました。この棒(圧縮材)の両端にはターンバックルのようにネジが切ってあります。一端は時計回りに、他端は反時計回りにネジが切られており、棒(圧縮材)を回すと棒(圧縮材)自体の長さが延長されます。棒(圧縮材)が長くなることでテンセグリティ球の直径も延長され、テンセグリティに初期張力がかかります。この棒(圧縮材)自体をターンバックルとする考えによって、アートワークとしてだけではなく、テンセグリティのエンジニアリングを向上させることができます。

パイプ同士が干渉することなく連続的な多角形を構成する。
ワイヤーにターンバックルはなくワイヤーの華奢さが際立つ

Tensegrity is a lightweight structure consisting only of rods (compression material) and wires (tension material).While its beauty is appealing due to the elimination of waste, it is difficult to introduce initial tension into a large number of wires.Conventionally, this problem has been solved by attaching numerous turnbuckles to each wire. However, this method spoils the beauty of the bars (compressed material), which are suspended on thin wires and give the impression of floating.

We have solved this problem by giving the bar (compressed material) the function of a turnbuckle.Both ends of this bar (compressed material) are threaded like a turnbuckle. One end is threaded clockwise and the other end counterclockwise, so that turning the bar (compression material) extends the length of the bar (compression material) itself. The diameter of the tensegrity sphere is also extended by the lengthening of the rod (compression material), and the initial tension is applied to the tensegrity. This idea of the bar itself as a turnbuckle improves the engineering of tensegrity as well as the artwork.

入店すると同時にテンセグリティと地下の販売フロアが目に入る。
端部には二重ナットの機能があり、揺れによる緩みを防ぐ。

棒(圧縮材)の端部の詳細

両端に逆向きのネジが切られターンバックルの役割を担う。

Detail of the end of a bar (compression material)

Both ends are threaded in opposite directions and serve as turnbuckles.

 

写真のようにネジが切られている。
ワイヤーは芋ネジによってかしめる。
ループ上のワイヤーの溶接部を合わせることでマーキング位置が示される。

テンション材へのマーキングを性格かつ効率的に行うために、

円形のジグを作成しました。

To mark tension material with character and efficiency,

A circular jig was created.

 

吊り元の試作・検証

Prototyping and verification of suspension source

研究室内の天井にフックを差し、釣り元の検証を行った。
浮き輪を緩衝材に組み立てを行う。

組み立て時には下半球を浮き輪に乗せ、平面にならないように細心の注意を払いました。

During assembly, we also placed the lower hemisphere on a float and took great care to avoid flat surfaces.

 

横幅の合うトラックで釣って運搬する。

テンセグリティでは1mmのズレが構造全体に歪みをもたらします。

運搬では、テンセグリティに不適切な力が入らないよう、半分に分けたものを重ね、トラックの中でも吊られた状態となるようにしました。

We took the utmost care not to destroy the tensegrity.In tensegrity, a 1mm misalignment can cause distortion of the entire structure.

In transportation, we stacked the halves in half so that the tensegrity would not be subjected to improper force, and so that it would be suspended in the truck.

 

Credit：

＜協力会社＞
（株）鎚絵

＜関連作品＞
270本のテンセグリティ球体のモデリング・マニュアル
Tensegrity　Theory of Earth System Design 2015

＜主担当＞

山下麗

＜担当＞

石田花恋、尾崎正和、岡崎恵大、江田俊介、澁谷香芙加、三宅隆太、小林虎太郎

脚注：

注釈なき写真は鳴川研究室提供