植物染料とは、草木染めの染料として知られている天然染料である。合成染料が輸入される明治以前まで、衣類の染料として利用されてきた。その特徴として、色むらが生じること、濃く染めにくいことなどが挙げられる。合成染料と比べて色が不安定であることから、量産型市場では化学染料が台頭していく結果となり、その利用機会は減少した。しかし、私はこの植物染料の特徴に着目し、縦横の糸で面が構成されている織布に対して、繊維をランダムに潰して面を構成している紙は、植物染料の色むらの表現媒体として適しているのではないかと考えた。特に和紙は洋紙に比べて繊維が長く、細部の滲み表現に有効である。植物染料の不安定な色素は、染色の途中で色分解が生じ、染色部分と、その広がりの先端部分とでは自然と色変化が生じた。面の密が高い和紙に利用したことで、植物染料のデメリットであった不安定な色素を活かす表現が可能になった。