2022年度卒業制作 – 「下水道管の最大利用 汚水マンホールのトイレへの転用方法」鈴木英佳

どこでもトイレの実現 - 下水道管はトイレの必要最低限の形である

私は、「トイレがない」と言われる状況に疑問を抱いてきた。あらゆるトイレと繋がっているはずの下水道管は、日本中どこにでもあるからだ。下水道管の、「勾配によって常に水が流れている点」、そして「全てのトイレが通ずる道であり、下水と地上をつなげている点」は、現代の排泄行為における水の必要性なくした必要最低限のトイレの形なのではないか。

とはいえ、排泄の行き場の確保だけではトイレ環境は出来上がらない。私がトイレに必要と定義した条件は以下の通りだ。

 – すぐに排泄物を処理できるシステムがあること

– 強くて安心な個室があること

– 上記を誰でもすぐに確保できること 

 上記を踏まえれば街中どこでもトイレになるポテンシャルがあると定義した。 

これらの条件を踏まえ私は、マンホール内に収納できて、マンホールが説明書となり、マンホールに流せるトイレを検討した。

成果物の特徴と先行事例との比較

先行事例として、図2に示すように、マンホールの上にトイレを立てるいわゆる「直結型マンホールトイレ」がある。 これは地震や地域災害用に倉庫に常備されるが、必ずしもどこでもすぐに使える装備になってるわけではなかった。

成果物の特徴は図3上部に示した通りである。三つの特徴によって、既存の「直結型マンホールトイレ」に残る課題を解決し、「いつでもどこでも必要な時にはやくトイレができる」ということを達成している。

製作物紹介

上部構造

トイレの上部構造(個室)は、ミウラ折りを基本とした折り畳み機構を採用した。 上部構造の重さは6.5kg前後、二人で組み立てるのに最適なものとなっている。 折り畳んだ際のサイズが下記のようになっているため、専用の袋にいれ下水道内にしまって保管することを考えている。こうすれば日ごろ歩道である場所でも、トイレを工事の必要なく設置することができる。

今回の試作では寸法や重さ感を主にスタディを行なった。パイプはイレクターパイプとジョイントを使い、その他の部品はベニア板を使用した。イレクターパイプを使うことで、パイプを任意の角度や長さに調節を可能にし、容易な試行錯誤を可能にした。その他1:1のディテールの工夫はこまめなスケッチを通じて行った。

マンホール

次にマンホールは上部構造の固定と組み立てをする際のインフォグラフィックスの機能を果たしている。

マンホールは、通常の点検用に使用する大きなマンホールの内部にトイレ用のマンホールが入っている設計になっている。マンホールに印字された文字、そしてグラフィックによって使い手はいつでも設置方法がわかるようになっている。

 

上部構造には、地面に対して垂直のパイプの下に右図のようなジョイントが計5個ついており、マンホールにあいた5つの穴に接続するようになっている。

ジョイントには内部にカム構造がついており、パイプについたハンドルを回転させることでマンホールと接続する歯が出てきて、下からマンホールを上部構造と挟み、固定する仕組みになっている。

シューター

シューターは折りたたみの使い捨ての設計になっていて、三日ほど使える想定。便器とマンホールにつけることで、便座と下水を繋げる。シューターのマンホール側についた弁によって、匂いが上がってくることを抑える試みだ。

使い方ガイド

このトイレは、「トイレが足りない!」と言われることが多い災害の断水時にも応用できる。一年に一回の防災訓練の際に、人々は家の近くにあるマンホールの場所を確認し、実際に設置する機会を得ることとなる。このトイレは組み立ての工数が 少なく材料もほとんど揃っているため、必要な情報をグラフィカルにシンプルに表現することができる。この冊子を収納の再同封するだけでなくネットでの配布や訓練 の際の市民への配布を目論んでいる。